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年の瀬です

今年はなかなか更新出来ず。。。



航輝です。




今年最後の更新だ。
























俺はこの子が好きらしい。
そう思ったのはいつからだったのか。
弟みたいだとか、可愛い後輩だとか、そんなモノじゃない。

…気付いたのはもう、ずっと前のような気がする。




風見鶏10




コイツが俺のために罠を仕掛けるのが好きだ。
俺を思って、落とす吊るすからくりを仕掛けていると考えるだけで、照れ臭いような、こう、こそばゆいような感じがする。
掛かってやりたいと思う反面、すべて突破してやりたいような気もする。捩じ伏せる度に、きっと立ち向かってくると信じているからこそだが。
兵太夫の技術は、まだ1年だと思えないほどに素晴らしい。
まぁ、立花仙蔵に綾部喜八郎という委員会の面々を見れば納得も出来る。
やはり、習うより慣れろで好きだからこそ貪欲なのだろう。

最近の罠は、蓋の閉まる落とし穴。
罠を仕掛けるときの目印も判りやすくしっかり残すのが忍術学園クオリティというか、らしさ、というか。
開けようと思えば開けられるであろう蓋。そんなもの、一緒に落ちたのならば開ける必要なんか感じない。
俺はコイツと共に過ごす時間が好きなんだ。

だから罠に掛かるのは苦ではなく、プライドも傷つかず。あの瞬間、俺はコイツと共にあるということをただただ、噛みしめていられる。



兵太夫が好きだ。



抱きしめて口付けて俺の物にしてやりたいと願ったところで叶う筈もなく寧ろ叶えてはならないと言い聞かせて耐えて耐えて耐えた。


忍者の三禁に溺れてはならない。



「ズルいよ」

兵太夫、言うな、それ以上言うな。




――いや。
言って欲しいと願っているんじゃないのか。



「酷いよ」

…狡くて酷い。
確かにそうかもしれない。俺は自ら忍者の三禁を犯すのを躊躇い、コイツも溺れれば良いと考えているのではないか?
コイツが俺へ愛しい言葉を吐けば、これ幸いと手に入れる気なんじゃないのか。



「俺をきらいか」



決してそんな事は言わないのを判っていても訊いてしまう。

「…俺は愛しく思っているんだがな」

狡くて酷い所以はここだ。
怖いだけだ、認めたらどうなるか。仮にも忍者の端くれで、自分から色に走った事実から目を背けたいだけなんだ。だからコイツを巻き込みたい。
――バカだな。
こんなとこまで遥々来ていて、まだ三禁に背いていないと言い切りたい俺はバカだ。

「兵太夫」
「…何」
「つれないな」
「つれちゃだめ」
でしょ、と顔を伏せたまま頭を振った。こんな1年坊主にさえ理解出来ることなのに。
「…そうだな」
「うん」
穴の蓋がカタカタ揺れているのを聞きながら、どうしたら開けることが出来るか考えている自分を意識した。

――いつまで耐えているつもりなんだ?


「兵太夫」
「だから何ですか」
いい加減にしてよと小さく聞こえる。
悪いな、もう少しだけ。
「俺はお前を愛しく思っているんだが」
頭の上で相変わらず蓋が鳴っている。
カタカタカタ。
「だから何」
「本当につれない奴だな」
「だからつれちゃダメなの」
「…そうなんだが」
「そうなんでしょ」
頑なに目を合わせることを拒否するコイツは健気だ。
一生懸命なお前の態度は尊敬する。ただまぁ、その期待は、半分報いて半分砕くが。
「文を、待っていただろ?お前」
「………」
「それなのに、俺がどれだけ楽しみにしていたのか、気が付いていないんだろ」
「………」
信じられない、とやや頬を膨らませて続きを促す。
なんだ、この辺の可愛いげのなさ。噂に聞く、作法委員の特徴なのか?
「お前のからくりを待ち望んでいたかを、知らないだろ」
「………」
「足柄山からわざわざこんなところまで来る意味だとか、お前だって考えたことあるだろ」
「そりゃ、」
ないとは言いませんけど、と小さく答えたことに満足する。
お前も俺に溺れてしまえ。
忍者の三禁を超越したら良いじゃないか。
1人ではなく、2人で。

「…さて」
ふう、とため息をつく。
「これから俺は蓋を開けようと思うんだが、どうだ」
どうだ、と言われてキョトンとしているのが何となく可愛らしかった。年相応、というか。少年らしさといおうか。
「…だから」
「………」
「だから、お前が好きだってことだ」
「………!!」

何かを言いか眉をひそめて目を反らして。
ふぅ、とひとつ、ため息をついた。

「…あんたは、こういう事は言わないと思ってた」
「へぇ、それで」
「僕に言わせたいんだと思ってた」
「…あぁ、そうだな」

お前までもそう思っているなんてな。全く、俺ときたら、分かりやすいにも程がある。

「…でもまぁ、良いよ」
へへへっと今更になってはにかんだ笑いが面白かった。
風の音が強くなる。
「うん?」
カタカタと僅かに開いた隙間から差し込む光に目を細め、暗闇に慣れた目を慣らそうとする。
今の兵太夫の顔を見ないなんて勿体無い。
きっとこの先、暫く見られないに違いないのだから。
この、笑顔。

「そういう仲に、なっても良いよ」



少しばかり泣きそうな、それでも満面の笑顔が、愛しいと思った。





風が吹いてクルクル回る風見鶏。
方角はいつも、お前に向くに違いない。
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取り扱い傾向
食満三木・食満綾・文団 基本的にマイナ。 全て脳内妄想による捏造の産物です。 新たに与四兵始めちゃいました。
プロフィール
HN:
航輝
性別:
女性
自己紹介:

団蔵、きり丸、文次郎、滝夜叉丸は不動のベスト4ですがその他の子たちも大好きです。その時の熱の入り方によって傾向がかわるやもしれません。
連絡先→ ar.k512.roger★hotmail.co.jp ★→@でドウゾ。
twitter→takeya_chika(航輝)です。時々つぶやいています。