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ノヅの市川さんからの誕生日SS。
伊作と留三郎。

さっきから携帯で打つとイサクがイサキになります。

魚か。
魚がそんなに好きか。






それはともかく。

伊作と留三郎は意外だったんだよね~
ふふふ。






















 誕生日など普段は忘れている。それくらいが丁度良い、とわかったようなわからないような、そんな言い訳を笑顔で受け入れるくらいには、こちらも記念に属するものには興味が無い。この世に存在することへの感謝は何も特別な日にすることではないし、ただ折に触れて思い出せば良いのだと思う。
 無に帰すことへの恐怖は綺麗に無くなって久しい。それは危険なことなのだと言う。それはそうだろうと受け入れて、しかし実感を伴わないのは如何ともしがたい。そんなものを備えたまま平静でいられるほど、強くはなれなかった。それはそれで良いのだと言う。生き延びることで勝利なのだと。するともうわからなくなる。
 さて、大切なものは何だったか。

「留三郎、それはね、お前が馬鹿だってことだよ」
「はぁ?」

 不機嫌な顔をした伊作はくるくるとさらしを巻いていく。さらし包帯果ては褌、いくつも積み重なったさまは反物の様で、仕切りの向こうの伊作側はもはやなんの部屋だかわからない。
 お前の部屋も大概だ、とい組の二人は口を揃えて言うが、その原因は自分達だとわかっているのか。修補は嫌いではないが奴らの便利屋になりたいわけではない。どいつもこいつも壁を壊してはまた壊す。直せの一言で直ると思っているのか、当然そんな訳が無い、知った上で肩を叩き、あぁまったく腹が立つ。

「ここに六年もいて、そんなことまだ思ってるのか?」
「お前が俺の誕生日忘れたフォローだろうが」
「あぁそれは悪かった。でもね、」

 今のはフォローを超えてるよ、らしくもない。まぁ死ぬのが怖かろうと嬉しかろうと死ぬもんは死ぬんだって、そんなのは今更だからどうでも良い。いやどうでも良くはないか、好き好んで死にたい奴は死んじまえば良い、残念ながら僕が丁寧にお助け申し上げるけどね。そうそんな話じゃなくて、
 伊作の話は放っておけばいつまでも続く。こと人間に関わる話は長い。化学物質講座だろうが怪我の悩みだろうが聞くのも好きなくせに話すのも好きだ。熱中した伊作を適当に流すのは簡単で、喋らせておけばそれで済む。積み上がっていく反物を視界の端に入れながら、目の前の火縄銃に神経を注いでいればいずれ過ぎ去る様に出来ている。
 つまりね、大切な事が何かっていうのは精神性に左右されるものであって共通ではありえないんだよ。個々の状態にも影響されるし、それぞれの環境がもたらすものも関係してくるんだからね。一つだけっていうのは魅力的に見えるけど不毛で、留三郎が考える大切なものが僕にとっての大切なものとは限らない。でも僕達はどっちも忍だろう。この大切なもの、における差異が忍として生きていくにあたってどれくらいの重みを持つかって言ったら、この問いが無意味だとは言わないけど、体調管理の方がよっぽど優先順位が高くて、大体君達は、

「てこと。わかった?」
「おう」

 留三郎が矯めつ眇めつする火縄銃は察するに修理が終わったのだろう。だからたぶん後半は聞いていた。用途もわからない道具に埋もれて、仕切りの向こうの留三郎側はもはやただの倉庫だ。衛生には当然こちら側で気を使っているから問題無いとは言え、ほどほどにして欲しい。
 ろ組の二人に言わせればお前の部屋も十分倉庫、ということになるけれど、自分達の使用率の高さに自覚は有るのだろうか。皆して傷を放置、なめれば治ると言ってきかない、ひどくなったら頼むよ、そこからでは治るものも治らない、あぁほんといい加減にしてくれ。
 こうやって何度も説教染みたむしろ説教そのものを繰り返す、そんな必要は本当は無い。留三郎は何も悩んでいるのではなくて、こんなものは重さを装った軽口のうちだ。それはわかっていて、わかっていて安堵する。気になるうちは人間だ。それにかこつけて多くを語り過ぎるのは悪い癖だと思うけれど、こんな風でないと話す気にもならない。真面目に聞かれても渡せるものなど無いのだし。

「僕はさぁ、心配してるだけなんだよ」
「わかってるよ」
「あ、そうなの、それは意外」

 伊作は諦めた様に笑みを作り、それは溜息に似ている。しかし伊作の溜息は悪い時に限ったものではないからここは良い方に取っておく。積み上がった反物ならぬさらしその他を半分抱え込んで立ち上がると、ありがとう、と伊作は言った。これが何のために積み上がっているかくらいは知っている。医務室に向かう途中で伊作が転ぶに決まっているので、別にいい、と複数の意識を込めて返事をしておいた。
 さて、大切なものは何だったか。
 そんなもんはどうでも良いが、いやどうでも良くはないと力説されたばかりだ、わかってるよ勝手に死んじまったりしない、しかしこいつ結局祝いの言葉は無いのかよ。
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取り扱い傾向
食満三木・食満綾・文団 基本的にマイナ。 全て脳内妄想による捏造の産物です。 新たに与四兵始めちゃいました。
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団蔵、きり丸、文次郎、滝夜叉丸は不動のベスト4ですがその他の子たちも大好きです。その時の熱の入り方によって傾向がかわるやもしれません。
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