背伸びと書簡･１

？左近。



左近のお相手は私の中での決まりはありますが、
あえて触れません。
お好きな方を当てはめてどうぞ。

























秋休みで１週間｡
きっとどこかで会えるだろう､と期待して｡
僕はこの部屋に来ている｡


｢…い､あ…､…タク｣
ブツブツ言いながら扉を開く気配がした｡
｢こんばんは｣
｢何で全部放り出して消えるんだろう…あの人､本当に信じら｣
｢こんばんは｣
独り言が終わるのなんか待ってられない｡
｢こんばんは｡…え!?｣
｢こんばんは｣
信じられないと言う顔をするのが楽しくて､思わず笑ってしまう｡
｢え､こんばんは､え？何故｣
｢休みで｣
｢や､休み？｣
｢はい１週間｣
｢長っ｣
｢秋だから｣
｢秋だから!?｣
何ですかそれと呟きながら額を押さえ､横に座り込む｡
｢…どうしたんですか｣
｢まさか､いるなんて｣
｢すみません｣
｢いえ｣
びっくりした､と頬が掌に包まれる｡
｢…仕事がね｣
｢はい｣
｢…珍しく３人分なんですよ｣
いつもの山積みは何人分ですかと聞きたいが黙っておく｡
｢…そうか､だからあの人､自分だけ放り出して…!!｣
｢はぁ…？｣
すっくと立ち上がり､仕事します､と呟いた｡
｢今からですか!?｣
｢出来ますからね｣
｢あの､僕はもうしばらく居ますから｣
背中にしがみついてみる｡

｢…少し痩せました？｣
｢あなたは重くなりました？｣

一度抱き上げられて､ちょっと笑ってからすぐ降ろされる｡
｢明日は軍議がありまして｣
｢明後日でも待ちますよ｣
｢仕事…山積みなのに｣
｢だから僕は１週間休みですから｣
｢あぁ､秋だから｣
｢はい､秋だから｣

明日の朝からにしますね､と布団に潜るのを眺める｡
｢…寝ないんですか？｣
｢寝てください｣
僕は見てるから､と横に座った｡
｢あなたも寝なくちゃ｣
背が伸びないでしょ､と笑って｡
｢…では､はい｡おやすみなさい｣
｢おやすみなさい｣

きり丸は大木先生と仲良くやっているのかな､とチラリと考えた｡
どうか楽しんで､と１人で願う｡

睡魔は意外に近いみたいだ｡