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文団です。
バスタブに一滴2 もりもり更新できる時期ってあるよね。 例えばこれを愛というなら、湯船に墨を一滴垂らしたくらいに淡い淡いものだと思う。 僕は確かに先輩と頻繁に街に出掛け、委員会を過ごし、宿題を見て貰うようになってからは放課後の4割位を(委員会を含め)先輩と過ごすようになったけれど、先輩は僕を後輩以上の扱いにはしていないだろうし、勿論僕も、尊敬と親しみが混ざって昇華したような、そんな感じだけ。 話は最初に戻るけど、先輩後輩以上の愛情というなら希釈は5000倍以上。それくらいのものでしかなかったんだ。 潮江先輩と僕がただならぬ仲って噂は一体どっから来たんだろう? 先輩が僕を呼んでるらしい。急いで会計委員の部屋に向かう。 今日は何をするのかなぁ。 最近はずっと、 「お前の動きは女として不自然すぎて見た目と合ってねぇんだよ!!」 …という先輩の言葉により、街で完璧に女の子として過ごす訓練みたいな事をしていたから、そろそろ思い切り動きたい。これも会計委員の性の1つだろうか?(何せ僕らは戦う会計委員なのだ) 乗馬に行きたいな、と思いながら部屋の戸を勢いよく開ける。 「潮江先輩、今日は何の訓練ですか~!? …あ、れ?」 先輩じゃない。いや、先輩だけど潮江先輩じゃない。 「文次郎でなくて悪かったな」 部屋にいたのは、立花先輩。 何で、先輩がここに?僕は来る部屋を間違えたんだろうか。 「えーと…僕、部屋を間違えたみたい、です?」 失礼しました、と戸を閉めた。 そのまま下がる。1歩、2歩。…やっぱり間違ってないよなぁ… 「あのー…?」 中を覗いて、立花先輩しか居ないことを確かめた。いないよ、やっぱり。もしかしたら、今日は集合場所が違うとか。 先輩がそんな事を言っていたかもしれない、と記憶の中を探してみる。 「文次郎なら、留三郎と意地の張り合いをした結果の保健室だ。…ま、大したことはないみたいだったから、後でまた来るんじゃないか?」 2人とも馬鹿だな、とカラカラ笑う立花先輩を見ながら、そうですかー大変ですねーと返事をする。 「…先輩はそれを言う為にわざわざ此処へ?」 だとしたら作法委員も6年い組もよっぽど暇なのか優秀すぎるかだ。他に用事がないなんて、信じられない。先輩と僕らとじゃ訳が違う。 「それもあるがな。少しばかり文次郎の奴をからかってやろうと思ってな、お前を待っていたんだ」 「暇なんですか?」 「暇なんだ」 「はぁ…」 最近面白いことが少なくてな、と残念そうに首を振られても。僕じゃ役に立てない気がしますよ先輩。 「文次郎の奴、お前のことを気に入っているみたいだからな」 どんなもんかと思ってな!と言う先輩が色々と部屋に広げてる。 化粧道具や着物やその他の小物。あと何か、よく分かんないものが幾つか。あの包みは…何なんだろう…。 よし、こんなもんだな!と先輩が改めて僕に向き直る。 「さ、脱げ」 いやいや。脱げって。 「えーと、先輩…?潮江先輩は僕が余りに女の子っぽく出来ないから見てられない、とかそんな事を言ってたのであって、格好がどうとかじゃ」 「良いから脱げ」 「…はい…!!」 にっこり、じゃないです先輩。 「よろしい」 立花先輩の恐怖の微笑みを見ても従わない下級生は居ないと思う。…上級生はどうなんだろう? ……………。 あぁ、ダメかもしれない。 忍び装束を脱ぎながら、気になるあれやこれやの内容を尋ねてみる。 「これなんですか?」 「付け睫毛」 「じゃ、こっちは?」 「髪留め、簪…付け髷もあるかな…」 これは全部、先輩の自前なんだろうか…?問うのも、返ってくる答えが怖くて聞けないままだ。そのまま先輩に好き勝手に着付けや化粧をされておく。 それにしても、潮江先輩遅いなぁ。 ふと、先輩が手に持っている包みが気になった。 「先輩、これは…何ですか?」 「何に見える」 「えー…何かの巾着…ですかねー」 「そんなもんだな」 「…用途は…?」 「ん?まぁ、詰めるくらいかな」 「詰め…?」 「あぁ。胸に」 「胸!?」 「何でも試してみることだ」 「はぁ…?」 似合わないと思う。心の底から。 「まだ終わりませんか…?」 「もう仕上げだ」 先輩は結い上げた髪に飾りをつけて、よし、良いぞ、と肩を叩いた。 うーん…自分がどうなってるか全然分からない。 「鏡、とか」 この部屋にそんな物がないのはよく知っているけれど、念の為。 「この部屋に置いてあるのか?」 意外、という表情がありありと見て取れる。 「…ないです」 「だろうな」 この部屋に置いてあるのは帳簿伝票に筆に墨、10キロ算盤くらいのものだ。後は大体各自持ち寄り。 「ま、私を信用することだな」 …元から疑ってもいません。 「問題ない。きっと文次郎も気に入るから」 「はぁ…ありがとうございます」 その潮江先輩はいつ来るんだろう。 立花先輩と2人というのに何だか慣れなくて、所在なく窓辺に行ったり立っては座ったりを繰り返してしまう。 立花先輩の面白いものでも見るかのような視線が痛い。 「時に団蔵」 「はっはい!?」 「そう身構えるな。私より文次郎のほうがよっぽどおそろしいだろうに」 「えー…と、怖くはない、ですよ」 緊張するだけで。 「そうか、それは結構。で、だ。」 「はぁ」 「お前、文次郎の何なんだ?」 …何なんだ? 「……?え、えーと、同じ委員会の後輩ですけど。っていうか、別にそれを聞かれてる訳じゃないですよね」 今更聞かなくても知ってるじゃないか、そんな事。 「他には?」 「他…ですか」 他ってなんだろう。僕は先輩の何なんだろう。 「いや…それ以上の何かが判らないんですけど…」 「ほう。では街で手を取られたりとか」 「時々、転び掛けた時には」 「何かを貰うとか」 「えー…馬用のブラシを」 「…度々2人きりになるとか」 「街に行ったり委員会で居残ったり宿題を見て貰う時にはなりますね」 暫くそんな問答をしたあと、分かった、もういい。と先輩は額に手をやった。 「何やってんだアイツ」 僕は首を傾げるばかりだ。 それにしても、潮江先輩本当に遅いなぁ… 黙って窓の外を眺めるしかなかった。 PR |
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航輝
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団蔵、きり丸、文次郎、滝夜叉丸は不動のベスト4ですがその他の子たちも大好きです。その時の熱の入り方によって傾向がかわるやもしれません。 連絡先→ ar.k512.roger★hotmail.co.jp ★→@でドウゾ。 twitter→takeya_chika(航輝)です。時々つぶやいています。 |