土井先生の

完全捏造

？土井

それでも良いよってかたはどうぞ｡
















何故この人は此処にいるのだろう？


｢…何故｣
｢貴方に逢いに｣
兜に反射する太陽の光が目の前を照らす｡
屈託のない笑顔が､眩しい｡
頬に触れた指先のひやりとした感触｡
離れる時に少し見えた甲に､墨の跡があるのに笑ってしまった｡

｢山のような仕事を片付けてきたんだから､いいじゃないですか｣
罰は当たらないでしょう？
そう言いながら真横に座る｡
１人分の熱を感じる｡
私の熱も少し上がる｡
赤くなるのは夕日のせいだと言えれば良いのに｡
今すぐに抱きしめたい衝動を抑えられなくて何が忍びだ｡自分の腕を思わず掴む｡

｢今は､平和ですか｣
ここに来られる程なのだから｡
｢それなりには｡…ただ､やっぱり乱世ですよ｣
つかの間の平和だろうな､と寂しげに笑う｡

｢我が殿には早く平和な世を治めていただきたいものだな!｣
そう､貴方が戦うのもその為の｡
｢…気を付けて下さいよ｣
｢心配しなくても俺たち強いですよ？｣
｢そうでしょうね｣
私は少し仕事をします､と背を向ける｡宿題の採点なんか後回しにしてしまいけれど｡

徐々に陽が落ちていく｡
何も話さない時間も心地良い｡

暫くしてから､手元の答案が減っていないことに気付く｡
横にも終わった答案は積まれているのに｡

あぁ､もしかすると｡

｢行かなければ｣
いかないで｡
｢また､来ます｣
もう少しだけ､傍にいて下さい｡
｢では､また｣
―――土井先生､


｢土井先生､土井先生｣
うたた寝なんかしてたら風邪ひきますよ､と揺らされる｡
｢…山田先生…｣
やっぱり､あれは｡

｢だいぶお疲れですかな､珍しい｣
｢すみません､気付いたら寝てたみたいです｣
さっそく続きしますよ､と笑うしかない｡
｢あんまり無理はしないでくださいよ､ちょっと私は出かけてきますから｣
｢はい､行ってらっしゃい｣



何でこんな夢をみたんだろう｡
らしくないな､と指先が触れた頬を撫でる｡
…こういうのは夢に見る側が想っているんだったっけ？


｢もー…この気分をどうしてくれるんですか｣
顔を伏せて笑うしかなかった｡