月光

何となく照れちゃうからワンクッション｡

食満綾部です。














雲の隙間から降り注ぐ月光に照らされて､白い肌が眩しかった｡

何でコイツは俺の所に来るんだろうな､と思うけれど来るもの拒まずというこのスタンスの為ならば文句も言えない｡
毎回毎回､俺じゃない誰かを求めているのだろうなってのを感じるくらいで､それは俺の知ったことじゃない｡

胸元あたりから押し殺した声が絶え間なく洩れ聞こえてて､あぁそろそろヤバいかな､と頭の端で感じる｡
１度強く揺さぶってやれば､小さな悲鳴が上がる｡

風で雲が流れる｡
月が眩しい｡

上気した肌｡いつも白い顔が薄赤く染まって､髪が一筋首筋に張り付いている様は､妙な色気に背筋が震えた｡
顔を少し此方に向かせて､１度､２度と口付けを落とす｡

｢綾部｣

涙が滲んだ目線が俺を射る｡
何だってそんなに､お前は誰を見てるんだ｡俺じゃない､誰かを｡頭の中では誰の目がお前を見てるんだ｡
｢けませんぱ､っぁ｣
｢俺を呼ぶなよ｣
見てないくせに俺を呼ぶな｡


涙に濡れた顔を照らす一筋の光｡
俺たちを見るのは月のみだと思ってみても､何だか心が苦しかった｡
月よ消えろと願いを込めた｡

なぁ綾部｡
お前が想う相手には､お前の心は通じないのか｡
関係がない俺でさえ､気付く程の想いなのに｡

力の抜けた身体を黙って撫でた｡