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彼らもまたもどかしい。
進まない!!!






















「…よくもまぁ飽きずに」
手紙を箱に放り込みながら呟いた。

僕をもしくはカラクリを気に入っている錫高野与四郎その人は、気に入ったと告げてから半月に一度の頻度で文を寄越す。その間に実際に逢おうが逢うまいが関係なく。
マメだなと感心する一方でここまでの好意が少し怖い。
僕は何一つとしてあの人に渡してはいないのに。


手紙によれば、今の6年は里に残るか、余所の城へ就職か、もしくは里を出てフリーでやるか選択の時らしい。
もうそんな時期なんだとか。
風魔は比較的里に残る場合が多いと聞いた。
あの人も里に残るみたいだ。今も仕事を多々任されているみたいだし。

城勤めのイメージもないし風魔の里が似合ってる。

そんなことを考えながら紙を出す。
マメに返事を書くのはシャクだから、僕が返事をするのは二回に一回、読むためには細工を解かなきゃいけなくしてる。
読めてようが読めて無かろうが僕は知ったこっちゃない。
まぁ多分、読んでいるんだろうとは思うけど。
完成した文を細い枝に結びつける。今日はどうしようかと枝を眺め考える。
「兵太夫は本当にカラクリ好きだな」
「うん、楽しいしさ」
「わざわざ文にまで付けるほどか」
「んー別の理由もあるけど」
「それは初耳だな」
「簡単に読めるなんて大間違いだ…――っ!?」
「だからわざわざ細工を寄越すのか」
そっちのが手間掛かるのに、と不思議そうに首を傾げる風魔の彼。
錫高野与四郎その人。
「いつの間に」
気付かないくらい文に夢中だなんて情けない。その現場を見られるなんて。
「喜三太に先に会ったんだ」
「そのまま帰れば」
「こうして来ているだろ」
「もう良いでしょ」
「あのな…」
ぐしゃっと頭をかき回す。潮江先輩も団蔵にやってたなぁ、なんて全く今は関係ないことを考えたりして、現実逃避だろうか。
触れる掌が心地良い。

「ホントに相変わらずつれないな、兵太夫。」
「別に」
「へぇ?」
「文句でも」
「まぁそれでも十分だけどな」
「じゃ良いでしょ」
「良くはない」
「何で」
「もう少しすると」
「許可してない」
「必要か」
「当たり前」

ふうん、と呟いて隣に座る。

「兵太夫」
まただ。この人は声で僕を追いつめる。
「俺を見ろ」
「…いやだ」
「見ろ」
いやだ、と小さく呟き、顔を伏せる。小さな抵抗。すぐさま背中に視線が刺さる。ふっと柔らかく変化したのを感じて安心した。
「みないよ」
ゆるゆる背中を撫でる手のリズムは一定、柔らかく触れる温もりが眠気を誘う。だめだ、起きなきゃ。

「兵太夫?」
なに、と答えたつもりだったけれど通じたかは分からない。そのまま目を閉じてしまう。
「起きろ、良いのか」
いったい何が良いんだ。説明してよ。
「おい」
ばか、と聞こえたような気がした。けどもう知らない。
「起きてる、起きてるよ」

「バカだな」
寝てるくせにと囁くのを聞いた。寝てない、と思う。吐息が漏れた。
額の髪をかき上げられ、何かが触れる。何だろう。

「兵太夫」
「んー…」
「分かった、今日はもう行く」
「そー…またねぇ」
「またな」
最後にぎゅっと抱きしめられた。

「寝たら次も何もないからな…」
確信犯かこいつ、と声に残念だという響きが含まれていて、少し笑った。
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取り扱い傾向
食満三木・食満綾・文団 基本的にマイナ。 全て脳内妄想による捏造の産物です。 新たに与四兵始めちゃいました。
プロフィール
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航輝
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女性
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団蔵、きり丸、文次郎、滝夜叉丸は不動のベスト4ですがその他の子たちも大好きです。その時の熱の入り方によって傾向がかわるやもしれません。
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twitter→takeya_chika(航輝)です。時々つぶやいています。